月収50万で生き甲斐のない生活か、月収30万で楽しい仕事どっちが良い?阪急電鉄の広告が示す格差問題とは

佐藤 祐(さとう ゆう)です。(@TSUMITATE_NISA

阪急電鉄の車両内に掲示された「中吊り」をめぐって、ネット上では物議を起こしています。

 

 

簡単に説明すると、「月収50万でやりがい、生き甲斐のない仕事をするか?それとも月収30万でも楽しいやりがいのある仕事をするか?どっちが良い?」という問いかけの広告です。

「はたらく言葉」を紹介

話題になっている企画は、阪急電鉄と、企業ブランディングなどを手掛ける会社「パラドックス」がコラボレーションした「ハタコトレイン」。2019年6月1日に始まり、30日まで続ける予定となっている。パラドックスは「はたらく言葉たち」という、働く人たちの言葉を集めた本を刊行している。企画では、本に収められている言葉を紹介。神戸・宝塚・京都各3線が対象で、1編成ずつ「車両ジャック」を展開している。

引用:https://news.livedoor.com/article/detail/16595939/ ライブドアニュース

6月の間は働く人の様々な言葉を広告に載せる企画をやるとのこと。

 

広告の真意としては給料の良い仕事だけど生き甲斐のない生活をするか、それとも給料が良くなくてもやりがいのある楽しい仕事をしたほうがいいのか?という問いかけであって金額はさほど重要ではないと考えていると思うのですが、多くの人は金額のほうに目がいっているようです。

 

この広告の問題は「月収30万が安い給料のように思わせている」ことであり、「月収30万はたいした額ではない」という印象を持たせています。

この問題に対して月収30万に満たない人や給料が少ないし生き甲斐もやりがいもないという人はどうなるのか?という意見が出てきています。

 

給料の低い人にとっては「舐めてんのかこの野郎!」と思われても仕方がないと思われる広告ですが、こういった広告が出てきた背景には世代間における収入格差があると思われます。

80代の研究者という設定

この広告の一番左端には「研究機関 研究者/80代」となっていて、80代の研究者の言葉という設定になっています。

たぶん、おじいちゃんだと思います。

 

これが今回の問題のキーポイントになりますね。

80代というと戦前生まれで、終戦時には小学生、その後は戦後の混乱期を経て、高度経済成長期、バブル経済、不景気の平成といった感じで長い人生だったと思われます。

少年時代はかなり厳しい生活であったと考えられますが、大人になってからは日本の成長期の恩恵をたっぷりと受けられていると思われます。

 

そういった人生を過ごした80代のおじいちゃんにとっては月収30万は安い給料だったのかもしれません。

 

しかし、現在の日本では1997年をピークに平均年収は下がっており、正社員ではなく、非正規雇用という形で働いている人が爆発的に増えています。

大企業でも45歳以上の人を早期退職や移動させる時代になっているので、高い給料をもらうのはどんどん厳しくなっています。

 

正社員でも給料は上がっておらず、非正規雇用により最低賃金程度の収入がない人にとっては月収30万という金額は高いと判断すると思います。

この広告の月50万円、月30万円が「所得なのか手取り」なのかによっても若干変わりますが、それでも月30万というハードルが高いと感じる人が現在の日本では増えています。

80代の研究者からみれば月30万円なんてたいした金額ではないという感覚でしょうが、他の人にとってはそこそこ大きい金額であるという視点が抜けていることが問題になっていると考えられます。

毎月50万とか30万という金額を使わなければ問題にはならなかったと思います。

 「毎日生き甲斐のない生活を送るか、仕事に行くのが楽しみで仕方ないという生活と、どちらがいいのか。」

というありきたりな感じの文章であれば、物議を醸すことはなかったと思います。

でも、やっぱり広告としては目立たないし、グサッとこないのでダメかもしれませんね。

 

しかし、研究機関 研究者/80代って飯塚○三さんをイメージしますね。
これは狙っているのでしょうか?

世代によって収入の差が大きく、収入が高い人目線で作られた広告と思われるのですが、そういった上からの視点での見方は今後は批判を受けやすくなる思います。

表現の仕方がちょっとでも怪しいと受け取る側としては不快に思うこともあるのではないでしょうか?

 

そんじゃ、また明日。